日本人の戦争観

日本人の戦争観―戦後史のなかの変容 (岩波現代文庫)

日本人の戦争観―戦後史のなかの変容 (岩波現代文庫)

戦後から1995年までの日本における「太平洋戦争」への戦争観を各年代ごとに考察する(「新しい歴史教科書をつくる会」の結成は97年であり、それ以降の戦争観は文庫版のためのあとかぎとして追記されている。)。

吉田が特に強調しているのが1950年代からの戦争観のダブルスタンダードである。対外的には必要最小限の戦争責任を認めることによってアメリカの同盟者としての地位を獲得する、国内的には戦争責任の問題を事実上、否定する、あるいは不問に付す、というのがそれである。
また「太平洋戦争」という呼称がそうであるように「アジア」に対する戦争観が抜け落ちていることも指摘する。
「戦争体験は、それを促進する政治的・社会的条件の下でのみ「風化」するのだと言えよう。」という一文が印象深い。