いましめをやぶる

破戒 (岩波文庫)

破戒 (岩波文庫)

主人公丑松は穢多であることを隠し、教師として働く。
しかし、同じく穢多である猪子蓮太郎の思想に影響を受け、
その穢多としての素性を明かすか、隠すかに葛藤する。
そしてついに父の言葉である「隠せ」を破戒する。


島崎藤村明治維新の四民平等は名目だけのものとして、明治文明に鋭くせまる。
本書では主人公の他にもう一人破戒を行った人物がいるのではないか。その人物は穢多ではないが、丑松と同じように苦しみ、葛藤していた。


本書はレイシズム批判としての性質を持っている。
当時のレイシズムは世間において「極当たり前」のものだったのだろう。それを単純に批判することは「超歴史的」視点になってしまう。当時のレイシズムを現在の隠された(無意識な、あるいは表に出にくい)レイシズムと照らし合わせ、「人種」を考えていく必要がある。